〇第3:譬喩品
譬喩品は、舎利弗の深い歓喜の言葉から始まります。方便品の開三顕一の説法を聞いて領解した歓喜です。舎利弗は、その喜びを全身で 表現します。舎利弗は躍りあがって喜び、起って合掌したのです。
しかし、他の弟子たちは、まだわかっていません。そこで舎利弗は、他の弟子たちのために、「未だかって聞いたことのない法」のいわ れを説いてくださいと釈尊にお願いします。それに応えてとかれたのが「三車火宅の譬え」です。
ある町に年を取った一人の大長者がいました。長者の家は大邸宅でしたが、古くて、建物は傾き、ボロボロの状態でした。その古い大き な家に突然、火事が起こり、たちまち家屋敷全体が火に包まれてしまう。家の中には、長者のたくさんの子どもたちがいました。家が燃 え、崩れ落ちようとしている。危険がいよいよ我が身に迫っている。
しかし、遊びに夢中になっている子どもたちは、そのことに誰も気づかないし、気づこうともしない。「三界は安きことなし 猶火宅の 如し」(法華経)とあるように、焼けている家は、煩悩の炎に包まれた現実の世界(三界)を譬えています。
長者は、子どもたちに、「お前たちが欲しがっていた羊の車、鹿の車、牛の車が門の外にあるよ。」とよびかけ、外に誘導しました。救 われた子どもたちが、約束の車を要求すると、長者は「大白牛車」を子どもたちにあたえました。羊の車は「声聞のための教え」、鹿車 は「縁覚のための教え」、牛車は「菩薩のための教え」です。それらを子どもたちは欲しがっていたのですが、子どもたちに等しく与え た大白牛車は、一仏乗、すなわち「仏になる教え」です。
つまり、菩薩だけではなく、二乗(声聞、縁覚)も、仏になれるということです。

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