〇第15:従地涌出品
迹門から本門へ。そこには、劇的な転回があります。それは深くとらえると、人類の生命観、人生観、世界観、社会観を一変させる精神 革命なのです。この湧出品と寿量品に秘めらている意義をほり下げていくことは、岐路に立つ現代文明に抜本的な治療を加えることになる。
菩薩たちは、勧持品で「三類の強敵が出現しても耐え忍び、弘教に励みます」とまで請願しています。ところが釈尊の本門の第一声は、 誰もが予期していない言葉だった。「止みね善男子」。あなたたちが法華経を護持する必要はない、と。釈尊は続けて語ります。「なぜ ならば、この娑婆世界に六万恒河沙の菩薩たちがいる。彼らが弘めてくれるからだ」と。その時、娑婆世界の全国土が震裂し、そこから 無量の地涌の菩薩たちが出現します。その姿は余りにも荘厳です。身は金色に輝き、三十二相(仏が具える三十二の理想的特徴)を具え 、無量の光明を放っている。地涌の菩薩を代表して、四人の大リーダーたちーー上行・無辺行・浄行・安立行の四菩薩が釈尊と民衆救済 という大目的について対話をはじめます。
弥勒菩薩が釈尊に質問します。「この無量の菩薩たちは、昔から今まで見たことがありません。世尊よ、どうかお話しください。彼らはどこから 来たのでしょうか。何の因縁によって集まったのでしょうか」と。釈尊は、遠い昔から、この娑婆世界で自分が教化してきたのが、この地涌の菩薩 だと明かします。弥勒をはじめ会座いた人々は皆、それまで、釈尊は菩提樹の下で初めて成道したと信じています。今まで歴劫修行してきた 結果、今世で初めて成仏したと誰もが思っていた。いわゆる「始成正覚(初めて正覚を成ず)」です。
今世で初めて成仏した釈尊が地涌の菩薩を「私は久遠よりこのかた、これらの大菩薩を教化してきた」と語ります。このような矛盾することを いわれては、あたらしく発心する菩薩たちが法を破る因縁を作ってしまうかもしれない。「願わくば、彼らのために詳しく解説して、私たちの疑い を、除いてください」と、涌出品の最後に弥勒は問いかけます。

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